水耕栽培で障がい者の就労機会を提供する「NPO法人ソーシャルハウス」

写真:ソーシアルハウスの工場の外観
読者の皆さんは「農福連携」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
農福連携とは、農業分野と障がい者等の働く場の確保を求める福祉分野が連携し、就労を後押しすることで社会参画を促す取組みとされています。
しかし、農作業と言えば炎天下での作業や、悪天候などで収穫が安定しないといった問題があります。
そうした中、近年注目されているのが「水耕栽培(注1)」です。
今回は、水耕栽培で障がい者の就労の場を提供する就労支援B型事業所(注2)「NPO法人ソーシャルハウス」をご紹介します。
ゆうゆうゆう編集部員がその取組み内容などについて伺ってきましたのでぜひ、ご覧ください。
(注1)完全人工光型植物工場で土を使わず水と液体肥料(養液)で植物を育てる水耕栽培を行っています。
(注2)就職が困難な障がいのある方に対して、雇用契約を結ばずに働ける場所を提供するサービス。

「NPO法人ソーシャルハウス」とは

障がい福祉の充実を図ることで、地域社会の総合的な多様化と成熟に貢献することを目的に設立されました。
障がいのある人に、野菜の生産から販売を通じた就労経験と、日常生活を送るために必要な自立訓練を行う生活支援サービスを提供する事業所です。

事業内容

「水耕栽培」

写真:水耕栽培方法を使用したとき種まきから集荷前までの野菜の成長段階

知的障がい者と精神障がい者の利用者が、水耕栽培での野菜作りと自立訓練プログラムを半日ずつ行っています。

①播種(種まき)
ピンセットやスプーンを使い、種をスポンジの上にまく作業
②植え替え(育苗、定植)
種をまいたスポンジを栽培プレートにセットし苗を育て、規格の大きさに適合した苗を定植栽培プレートに移植しさらに育てる作業
③収穫
規格の大きさに育った野菜の色や形状、重量をチェックし収穫する作業
④包装
検査に合格した野菜を専用の袋に詰め包装する作業

「自立訓練プログラム」

写真:利用者がボッチャを行っている写真と生活訓練の一環の写真

日常生活において自立できる訓練を実施しています。

①機能訓練
体力増強など身体機能を維持、向上させるための訓練
②生活訓練
調理実習や掃除の方法など衣食住に関する事を中心とした基本的な訓練
③社会訓練
社会のマナーやパソコンスキルなど、社会生活に必要な能力を得るための訓練

特定非営利活動法人ソーシャルハウスの新井理事様からのコメント

写真:ソーシアルハウス理事の新井様 ソーシャルハウスの親会社は水耕栽培の装置を製造・販売をしている企業です。
その販売先に社会福祉法人や就労支援施設のお客さまがいて、農家でもないのにどうしてなのかと調べたところ「農福連携」というキーワードに行き当たりました。
障がい者の就労に野菜の水耕栽培の事業がとても相性が良いことがわかり、せっかく装置を製造しているのだから我々も参入し、水耕栽培装置の良さを福祉業界に広めていきたいと思ったのが参入経緯です。
写真:水耕栽培の棚 そこで、NPO法人を立ち上げ「完全人工光型植物工場」で行う就労継続支援B型事業所を開設しました。
水耕栽培は、なんといっても天候に左右されない点がメリットです。
また、野菜栽培のノウハウも蓄積ができ、販売時にアピールのデータとしても利用ができるメリットも考えられました。
そして、野菜の生産量から出荷までのスケジュールが立てられるので就労支援が行いやすい特徴もあります。また、現在栽培している野菜は(種まき→植え替え→収穫)は7日間のサイクルで行っているので、土・日に種まきを行わなければ、土・日に植え替え、収穫の作業を行わずにすみます。このようにして農業においても土・日を休日とすることが実現できたのです。
ただ、初期投資と販売先の確保は大変でしたが、今は栽培している野菜の約8割を地元スーパーへ販売しています。
写真:利用者が集荷作業を行っている模様 利用者さんへは、継続していただけるように「声掛け」を積極的に行っています。「頑張りましょう」「あなたはこの事業所に必要だよ」といった必要性を伝えています。
作業時には、緊張感をもって取り組んでもらっていますが、作業を強制しないことに注意し、障がいの状況に応じて、その人その人に合った支援をするなどの工夫をしています。
また、休憩時間などはみんなでゲームをしたり話をしたり、アットホームな時間を設けています。
今後は、水耕栽培のノウハウも蓄積してきたので、現在の利用者さん20名を倍まで増やしたいと考えています。
そして、ゆくゆくは高崎市以外の地域などにも事業を拡大していきたいです。

ご利用者からのコメント

利用者Aさん
就労期間 7か月

写真:利用者が集荷作業を行っている模様 ソーシャルハウスは、以前通っていた施設で紹介されました。最初は覚えることも多く大変でしたが「水耕栽培」の作業にもなれ、現在主な作業は収穫と定植を任され、今ではやりがいを感じています。
今後はソーシャルハウスで学んだことを生かして一般企業に就職したいです。

利用者Bさん
就労期間 4年

写真:利用者が包装作業を行っている模様 通院していたころ、病院の方にソーシャルハウスについて教えてもらい、紹介してもらいました。
今は収穫の作業を主におこなっていて、トリミングや袋詰作業が思うように出来るようになったことで、やりがいを感じています。自分の障がい特性から、次の行動を支援者にはっきり示してもらう事が「うまく行く」秘訣だと思っています。
今後については模索中ですが、とにかく支援者とコミュニケーションを良くとりながらアドバイスを元に進路を考えたいと思います。

法人概要

写真:ソーシアルハウスの看板 名称:特定非営利活動法人ソーシャルハウス
所在地:群馬県高崎市上豊岡町580番9
設立年月日:2013年12月19日
事業内容:就労継続支援B型事業所(作業と自立訓練プログラムの両立)
利用定員:知的障害者、精神障害者約20名(2019/6月時点)
特定非営利活動法人ソーシャルハウスについてはこちら(新しいウィンドウが開きます)

イラスト:編集後記

写真:販売先で商品が陳列されている棚 取材をして感じたことは、ソーシャルハウスならではの「人のあたたかさ」です。
支援者の方々は、利用者が今までできなかったことができるようになったときの喜びが大きいとのことでした。
身近なところで「成長の過程」を目の当たりにしているからこそ言えるのではないでしょうか。
その人に合ったサポートをして、就労につながるのはうれしいことだと思います。
今後、障がいのある人が安心して働く場が増えるといいですね。

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