ICTを活用した歩行者移動支援について国土交通省の取り組み

国土交通省は、ユニバーサル社会の構築に向け、ICT(情報通信技術)などを活用した歩行者移動支援の普及のための施策を進めています。2017年度には、この取り組みのひとつとして「プローブ情報(注)を活用した『通れたマップ』実証実験」が行われました。
今回、この実証実験を統括された国土交通省政策統括官付の企画専門官である原田さん(取材当時)に話を伺うことができました。
その模様をお伝えします、ぜひご覧ください。

(注)プローブ情報とは
GPSセンサを搭載したスマートフォンなど携帯情報端末から一定の間隔で取得した移動情報のこと。

写真:国土交通省総合政策局の企画専門官、原田さんにインタビューしている様子

「プローブ情報を活用した『通れたマップ』実証実験」とは

イラスト:「国交省、プローブ情報を活用した「通れたマップ」作成の実証実験を開始」から転用。 この実証実験では、バリアフリー情報に関する必要なデータとして、まず実証アプリを通じて車いすユーザが自身のたどった軌跡をGPSセンサを搭載したスマートフォンなど携帯情報端末から一定の時間間隔で取得します。収集されたデータは地図上に「通れたマップ」として可視化されます。また、データ収集のほかに、アンケート調査として、プローブ情報の提供に対する抵抗感や「通れたマップ」の有用性などに関して、車いすユーザなどの意見を収集しました。
実験を行うにあたり必要となるプローブ情報データ収集ツールは、公募により民間事業者の中からNPO法人PADM(パダム)と国立大学法人島根大学総合理工学研究科が開発した「バリアフリーマップアプリ WheeLog!(ウィーログ)」が利用されました。今後は検証結果を元に、ICTを活用した歩行者移動支援に関するデータサイトの開設、自治体担当者向けのガイドラインの作成、バリアフリー情報をデータ化する際のフォーマットの作成など、オープンデータを活用し展開するためのプラットフォーム構築に向けて進められます。

国土交通省総合政策局、企画専門官の原田さんに聞きました。

聞き手: 通れたマップの実証実験が行われた背景について教えていただけますか?

原田さん: この実証実験は、「ICTを活用した歩行者移動支援の普及促進検討委員会」で検討されている中のひとつとして行われました。
「ICTを活用した歩行者移動支援の普及促進検討委員会」は東洋大学情報連携学部INIAD学部長の坂村健先生を委員長として、「ユニバーサル社会」の実現に向けた取り組みの一環として、身体の状況・年齢を問わず「移動経路」「交通手段」などの情報を手軽に入手できる環境を全国で整備していくことを目的として開かれています。
当面は、電子地図などの整備、活用及び移動に関するデータのオープン化により民間企業などが多様なサービスを提供できる環境づくりを目標としています。

聞き手: 当面の目標は、環境づくりとされていますが、実証実験で「バリアフリーマップアプリ WheeLog!(ウィーログ)」が利用されたのはどのような理由があったのでしょうか?

原田さん: 写真:WheeLog!の画面の様子 実証実験を行うにあたっては、スマートフォンや携帯情報端末などでGPSデータを取得し、プローブ情報を地図上に可視化できる既存の技術を公募によって選ぶことになっていました。結果、NPO法人PADM(パダム)と国立大学法人島根大学総合理工学研究が開発した「バリアフリーマップアプリ WheeLog!(ウィーログ)」を採用しました。

聞き手: 実証実験はどのように行われたのでしょうか?

原田さん: 実証実験は、東京23区内を実施エリアとして昨年11月から今年の2月にかけて行いました。
画像:実証実験の様子 主に車いすユーザに対し、「WheeLog!」をダウンロードして投稿を呼びかける手法で進め、国土交通省の報道発表やWheeLog!のホームページ、各障がい者団体への案内チラシなどで参加を呼びかけた結果、車いすユーザ145名からプローブ情報が得られています。
私も、プローブ情報の投稿が多かった渋谷エリア・銀座エリアでの車いすユーザの方の実証実験に同行しました。

聞き手: この実証実験の報告が3月に行われましたね。

原田さん: はい。
「平成29年度 第3回 ICTを活用した歩行者移動支援の普及促進検討委員会(平成30年3月14日)」にて、プローブ情報の収集・マップの作成、アンケート調査の結果とマップを自動生成する際に利用するGPSデータの精度の検証について報告しました。
(検討委員会の報告について詳細を知りたい方はこちらをご覧ください。)
写真:検討委員会での報告の様子
アンケート調査の結果から、当初から気になっていた障がい当事者にとって「ICT等を活用した歩行者移動支援の普及のための施策」、ここで言う「プローブ情報を活用した『通れたマップ』」のような情報が必要とされていることが確信できました!
「非常に活用できる・活用できる」との意見が8割を超えていたのです。

聞き手: 私も実際実証実験に参加させていただいた車いすユーザの一人として、報告会を傍聴しました。2時間ほどの時間でしたが、今後参考となる話が多く、非常に有意義でした。
「通れたマップ」の実証実験のほかにも、視覚障がい者に役立つ「空間情報を活用した歩行者移動支援」と言った施策もあるようですね。

原田さん: 私は携わっていなかったのですが、視覚障がい者に役立つ「空間情報を活用した歩行者移動支援」については、NTTクラルティ社の視覚障がい者社員が参加したと伺っています。
今回の検討委員会は、これまで出された提言の中で行われた施策を取りまとめ、報告する場となっていました。実証実験のほか、歩行者移動支援の取り組みに関する現地事業の成果、ガイドラインの改訂やバリアフリー法改正の概要など、内容が盛りだくさんだったと思います。

聞き手: そうですね。聴きごたえがありました。
最後に今後はどのような展開となっていくのでしょうか。

写真:原田さんにインタビューしている様子

原田さん: アンケートの結果から、車いすユーザの方にとってプローブ情報を地図上に可視化した情報は有益だと言うことがわかりました。
今後の議論は、どのように持続的に情報収集をするか、また、民間企業などで情報を多く利用されるようになるにはどのようにすればよいかの方向に移っていくと考えています。バリアフリー情報をデータ化するフォーマットをどうすべきか、オープンデータとして展開していくにはどうすべきか、といったところが課題になってくるのではないでしょうか。
「通れたマップ」は国が作ればよい、といったものではないと思っています。民間企業などに委ねた方が展開スピードも速く、安価でよいものが生まれると考えています。
運営当初は、限られた地域になってしまうかもしれませんが、2020年には、ICTを活用した歩行者移動支援サービスが展開している状況であるようにしたいですね。

聞き手: そうですね、車いすユーザの私は、どこかへ出かける際は、現地の状況を地図アプリなどWEBで調べてから出かけています。それでも安全で確実にいけるかわからず、不安なことが多いです。
ICTを活用した歩行者移動支援サービスが展開され、誰もが安心して出かけられる環境が早く実現することを期待しています。
ありがとうございました。

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