「見えない世界」を通して伝えたいこと(2/3)

ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンの副代表で、暗闇のアテンドスタッフも務める松村さんに、このイベントの魅力や今後の展望についてお話を伺いました。

「見えない世界」から学ぶこと

聞き手:ダイアログ・イン・ザ・ダークはどういう経緯で始まったものなのでしょうか?

写真:副代表の松村さん 松村:このイベントの発案者であるアンドレアス・ハイネッケさんがラジオ局に勤めていて、部下に視覚障がいの社員が配属され、その社員の研修係になったことがきっかけでした。
これまで視覚障がい者と接したことがなく、初めは戸惑ったそうですが、接していくうちに、「視覚障がいは面白い文化なのでは?」と思うようになったそうです。

聞き手:どんなところが面白いと思ったのでしょう?

松村:例えば、夜遅くに停電か何かで電気がパッと消えたとき、みんなはアタフタしているのに、その社員は何事もなかったように帰ってしまい、「何で帰れるんだ?」と不思議でした。
彼にとっては、電気がついていなくてもあまり関係ないのですよね。
ラジオ局という側面もあり、視覚障がいという文化が興味深いということに気づき、完全に光を遮断した空間を作って、その中を体験するというイベントを思いついたようです。

聞き手:なるほど、実際に生活していて感じたことがイベントになったのですね。日本でも開催するようになったのはどんなことからですか?

松村:代表の金井が、1993年に日本経済新聞のウィーンで「見えない展覧会」をやっているという記事を見かけ、衝撃を受けたそうです。
展覧会は、見るものであって、見ないで開催しているとはどんなことなのか、しかも、普段助けられることが多い視覚障がい者が携わっているとはどういう展覧会なのか興味がありますよね。
その記事を読んで日本でも開催したいと考えたそうです。

聞き手:開催するまでに色々と準備することなどあり大変だったと思います。どんなところに苦労しましたか?

松村:そうですね。消防法で最低限の光がないとお客さんを入れてはいけないという法律があります。
非常灯がついていると明るいので、イベントが成立しません。また、真っ暗だと、お化け屋敷としか思われないというのもありましたね。
そういうところを一つ一つクリアしてきたことでしょうか。

人とのつながり、触れ合いを感じるイベント

聞き手:このイベントに携わるようになったきっかけはどんなことでしたか?

写真:インタビュー風景 松村:私は第1回目から関わっていますが、最初は何のためにこれをやるのかわかりませんでした。
金井に何をやりたいかを直接聞くと、「アイマスクなどの障がい者疑似体験ではなく、エンターテイメント」だというのです。
暗闇の空間で人と対話をするイベントで、視覚障がい者がそこで働くのは理にかなっていると、話を聞いて、参加することを決めました。

聞き手:今、企業や学校では障がい者理解だけを目的とした研修をしていますよね。それとは全く別の考えなのですね。

松村:障がい者疑似体験とは全く180度ベクトルが逆なのです。
障がい者疑似体験というのはアイマスクで視覚を遮断し、視覚障がい者が不便でかわいそうだということを体験する意味合いがあるように思います。
それが当時から納得できなかったのですが、このイベントは暗闇の中で人間のできることを感じられるんだと思いました。

聞き手:「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の魅力ってどんなところでしょうか?

松村:普通にご飯を食べに行くような感覚でイベントに参加するだけで、視覚障がい者を自然に知ってもらい、自然に街で困っている視覚障がい者に手を差し伸べられるようになるところでしょうか。

聞き手:確かに、初めて出会った人たちでしたが、体験の中で自然と手を貸して協力し合える不思議な感覚になりました。

松村:お客さん同士も、助けて欲しいとと同時に人のことを助けてあげたいと2つの感情が芽生えてくるので、ほとんどの人たちが短時間ですごく近い人間関係になったりします。
本当に極端な人たちだと、出てきてそのまま飲みにいったりするグループもありますからね(笑)。

聞き手:そういうこともあるのですか。当たり前のことが気づきになってすごくいい体験だったと思います。

松村:そうですね。人のことがなかなか信じられない、信じにくいという世の中になっていると思います。そんな中で、まだまだ人を信じてみたいと思わせてくれるのがこのイベントなのです。
面白かったのが、3月の震災直後にキャンセルの方が相次いだのですが、逆にこんなときだから体験したいという方もいて、こんな不安な状況だからこそ、人とつながっていたいと言っていました。

誰もが対等な社会を目指して

聞き手:「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のアテンドをしている中で何か印象的なことはありましたか?

松村:イベントで一番最初に案内をした人を覚えています。なぜかというと、体験者が暗闇の中でどうしてこんなに動作がゆっくりになるんだろうと衝撃を受けたのです。
普段何気なく見ているものに対しても、全然わからず、正直「どうしてわからないんだろう」と感じました。案内した後、色々と自分で考えましたが、それだけやはり見えるということは大きな意味があることなんだと思いました。

聞き手:なるほど。アテンドをしていてよかったと思うことはありますか?

松村:自分についてや障がいについても客観視できるようになり、自分の強みを知ることができたことですかね。
私は、盲学校を卒業後、健常者と同じ大学に入りましたが、やっぱり健常者にサポートしてもらう感覚がありました。
健常者となるべく対等でいたいと思いますが、サポートを受けて生活していくというか「見える」のはやはり有利なことなんだと思いました。
それがこの案内をしてみて意識が変わったのです。暗いところは立場が逆になるんだと、良い意味で自信を持つことができるようになりすごく良い発見をしたと思います。

聞き手:それでは、最後に「ダイアログインザダーク」の今後の夢について、教えてください。

松村:具体的なミッションはないのですが、生まれてきたからには、視覚障がい者の能力を、どんどん社会に提供し続けるというのが夢なので、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というのがひとつのフィールドだと思っています。
また、今は商品開発をしていたり、研修をしていたりとイベント以外の活動も増えています。視覚障がい者も社会の中で、同じパートナーというか、本当に対等な関係というようになることを願っています。

聞き手:このイベントが、全国に広がって、みんなが同じ気持ちでいられる社会になってほしいなと思います。今日は、どうもありがとうございました。

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