野球はいろんなことを教えてくれる(2/3)

監督は難しい

聞き手:以前、矢本さんは選手だったそうですが、監督になられてどうですか?

写真:矢本監督がお話をしている様子

矢本::監督は難しいですね。選手のときは、ある程度自分のことだけをしっかりやっていれば、監督がチームをまとめてくれました。でも、監督業はそうはいきません。むしろ全体を見渡すことが必要です。選手たちの調子を見極め、ポジションや打順などを決めなければなりません。また、結果の責任も負うわけですから、最初の1、2年は、「監督」というプレッシャーが大きく、押され気味でした。

聞き手:1、2年の間に、どのようにしてそのプレッシャーを解消されたんですか?

矢本:練習を重ねるうちに、選手と気持ちが通じるようになったことが大きかったです。最初、チームができたばかりのときは、具体的な目標もなく、そんなに試合に勝たなくてもいい、という雰囲気があったんです。ところが、「やるからには勝とう」と目標を全員に示したら、練習での態度が変わってきたんですね。選手と監督の信頼関係のようなものがこういうところから生まれていくのかな、と肌で感じることができました。それが自信になったのだと思います。

聞き手:練習のときに指導するにあたって気をつけていることはありますか?

矢本:気を抜かないで一生懸命やるということですね。やっぱり、けがが一番怖いんですよ。選手たちは、それぞれ障害があるので、悪化しないためにも注意が必要です。それにけがをしてしまうと、せっかくの練習も意味がなくなってしまいます。スポーツというのは、気を抜くとけがをするんですよ。だから、やっているときは集中することと、うちのチームには試合に勝つという目標があるので、目標を常に考えながらやることが大事だと思っています。

聞き手:障害のある人に野球を教えていて、なにか困ったことなどはありますか?

矢本:困ったことというより、戸惑いはありました。やれる範囲で、とチームを作りましたが、最初はどうしても障害のことばかり気になってしまって、思うように指導することができなかったんです。ところが、練習を重ね、選手たちとの信頼関係ができるようになったとき、不安を吹っ切ることができました。皆が同じでなくてもいい、メンバーの1人1人が、自分のできることをしっかりやること、そうすれば、チームはまとまっていくのだと、実感できるようになったんです。ですから、今では障害があるから、という気負いや不安はなくなりました。

障害者野球は普通の野球

聞き手:障害者野球はどんな野球なんですか?

写真:バッティングの練習風景矢本:選手たちを見ているからこそ、常々感じるのですが、本当に普通の野球と変わらないんです。よくメディアでは、「障害者スポーツ」と言われますが、私は障害者スポーツという言葉はないと思っています。野球をやっている人が障害のある人なだけで、別に特殊なスポーツではないです。でも、どうしても障害のある人は、努力でカバーできない部分が絶対あるんですよ。だから、それをカバーするために用具を変えたり、ルールを一部変えたりして、動きやすい野球にしました。基本的には、野球であることに変わりはないので、「障害者野球」ではなく、「野球」だと私は思っています。

聞き手:一部、ルールが違うとおっしゃいましたが、どのようなところが違うんですか?

矢本:たとえば、片足の人や、車いすを使っている人がバッターボックスに立って、走る際に、腕のない人と比べたらハンディがあまりにも大きすぎます。そこで、足で走れる人が代わりに走る代走制度があります。バントは前に転がされると、全部セーフになる可能性がありますし、下肢の弱い人は奪取ができないので、バントはありません。盗塁も禁止にしています。あとは、パスボールです。キャッチャーをやっている人は、足の障害が重い人が多いので、パスボールしたときに後ろに取りにいけません。だから、体の一部に当たったら、ランナーは進めない、どこにも当たらなかったらひとつだけ塁をあたえるというルールがあります。

聞き手:矢本さんもルール作成に関わられたのですか?

矢本:そうです。13、14年前に全国身体障害者野球連盟ができたのですが、その時に、「役員として一緒にやってくれないか」というお誘いをいただいたんです。ルールは、役員全員で話し合って決めました。

聞き手:連盟に加盟している障害者野球チームは全国にどれくらいあるんですか?

矢本:全国に約40チームあり、地域別のブロックに分けられています。具体的には、北海道・東北、関東・甲信越、中部・北陸、西近畿、東近畿、中国・四国・九州・沖縄の6ブロックです。6ブロックごとに大会が行われます。地方大会の1位のチームが日本選手権大会に出場ができ、1位と2位のチームは、次の年の春に行われる選抜全国大会に出場できます。試合の形式は、トーナメント形式で行われます。

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