今回ご紹介するのは、東京都の新宿区と渋谷区にまたがる場所に位置する「新宿御苑」です。和洋折衷の美しい庭園から歴史ある建物まで、1年を通して楽しむことができます。
四季折々に表情を変える木々や花々。新宿御苑は都会にいながら、その息吹を身近に感じられる貴重な場所です。車いすユーザの編集部員が、園内のバリアフリー状況をチェックしてきました。ぜひ、お出かけの参考にしてください。
新宿御苑の歴史
新宿御苑は、江戸時代の内藤家の大名屋敷がそのルーツといわれています。明治時代には農業試験場が創設され、日本の近代農業や園芸の発展に寄与した後、皇室庭園の創建を経て、1949年に「国民公園」として一般に公開されました。開園から100年以上が経過し、樹木の老齢化による安全面や景観への影響が生じているため、現在は安全確保と景観改善を目的とした「健全な樹木の育成」に取り組んでいます。
散策する前に知っておきたいポイント
新宿御苑には「新宿門」「大木戸門」「千駄ヶ谷門」の3つの入園門があります。入園時に身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳(またはアプリ「ミライロID」)を提示すると、本人と介助者1名の入園料が無料になります。
なお、3か所ある入園門の券売所とサービスセンターでは、手動車いすの無料貸出(注1)を行っています。
また、車いすや杖を利用する方などは、入園時に「UDマップ(注2)をください」と受付の方にお願いすると良いでしょう。UDマップには、歩きにくい園路(未舗装路・砂利など)が一目で分かりやすいよう記載されています。そのほかにも坂道や段差・階段、多目的トイレなどの各情報が分かるのでおすすめです。UDマップは、下記よりダウンロードもできます。
「UDマップ」の詳細はこちら(新しいウィンドウが開きます)
(注1)台数には限りがあり、予約はできません。
(注2)ユニバーサルデザイン情報マップの略です。
新宿門周辺から日本庭園
新宿門からバリアフリーチェックを開始しました。
この門の最寄り駅は、新宿三丁目駅、新宿御苑前駅、新宿駅の3つです。門のすぐ外にある「インフォメーションセンター」には、案内カウンターのほか、アートギャラリー、カフェ、新宿御苑の魅力発信コーナーなどが併設されています。
今回はUDマップを参考にして新宿門を反時計回りにバリアフリーチェックすることにしました。UDマップでは、「母と子の森」周辺以外は、比較的アップダウンが少ないエリアであることが分かったため、回避することにしました。
(注3)UDマップに編集部員が実際に進んだルートを黒線の矢印で示しています。
途中、「足元注意」と書かれたパイロンが所々にありました。天候により枝などが散乱した際にも注意喚起を行っているそうです。さらに進むと遊歩道があり、その周りには落羽松(らくうしょう)という幹の下部が屏風状になる木々が見えてきます。
遊歩道から戻り、母と子の森と上の池の間にある日本庭園に行きました。深さのない砂利道だったので、一番近くの橋まで自走し、日本庭園を見渡しました。しかし、UDマップを参考にすると、庭園全体が砂利道でアップダウンが多いため、外周ルートに戻ることにしました。
外周の道へ出て後ろを振り返ると、サザンカが少し咲いていました(取材時、1月中旬)。先ほどの遊歩道を真っすぐ進んでも、この道に出られたようです。
グラウンド状の路面だったので、車いすを楽に漕ぐことができました。
千駄ヶ谷門・中央休憩所周辺
外周をさらに進むと千駄ヶ谷門に到着します。
千駄ヶ谷門の最寄り駅は、千駄ヶ谷駅、国立競技場駅の2つです。門の先には、春に桜が見頃となる「桜園地」や、その奥に「モミジ山」がありますが、UDマップではモミジ山から先はアップダウンがつづくようだったので、無理をせず戻り、日本庭園から千駄ヶ谷門手前の道を左へ進みます。
しばらくゆるやかな下り坂がつづきます。
坂が終わるころ、台湾在住の邦人によって建築された「旧御凉亭(きゅうごりょうてい)」が見えてきました。
入口付近にはQRコード付きの看板があり、音声ガイドを利用できます。詳しい歴史を知りたい方は、スマートフォンから「Audio guide(注4)」を読み取ってみましょう。
建物内にはスロープがあるため、車いすのまま中へ入れます。ただし、石畳や敷居の段差には注意してください。
(注4)QRコードを読み込み、言語とコンテンツを選択して再生する音声ガイドサービスです。
次に、しばらく坂道がつづきます。介助者がいる方は、無理せず介助をお願いしましょう。坂道を上がると中央休憩所です。バリアフリーチェックを開始からの移動距離は、約2kmです。
中央休憩所から元来た道を少し戻り「中の池」へ向かいました。近くのカフェに長いスロープがあったので、自走で進むことに。蛇行しながらつづく坂道なので、体力を温存したい場合は、カフェ下の平場にある休憩スペースで休むか、介助の方に押してもらうのが良いでしょう。少し遠回りになりますが、別のルートを通ることをおすすめします。
整形式庭園周辺
カフェを背に、右の整形式庭園へ向かいました。バラ花壇を両脇にプラタナス並木が左右対称のように配置されています。異国情緒漂う風景は、フォトスポットとして大人気。特にビスタラインは、桜やバラの季節には絶景となります。
プラタナス並木周辺の砂利は深いため、車いすの走行には向いていません。しかし、バラ花壇の周囲は舗装されているため、車いすでもバラの近くまで寄って撮影を楽しめます。一番狭い通路でも横幅は2mほどありました。
大木戸門周辺と駐車場
次に「新宿御苑ミュージアム」へ向かう途中、「玉藻池」に寄り道しました。砂利道を自走してみましたが、深さがあり、車いすの走行には不向きでした。すぐに舗装路へ戻り、「新宿御苑ミュージアム」へ移動しました。
ミュージアムの出入口付近は、ゆるやかな下り坂になっているため、車いすのスピード出し過ぎには注意しましょう。館内では園内の植物がタッチパネルで紹介されているほか、シアター展示室で新宿御苑の歴史を深く学べます。散策の起点にするのもおすすめです。
次に「大木戸門」へ。最寄り駅は新宿御苑前駅です。門のすぐ隣には駐車場があります。門の付近にクローバーマークの身体障害者優先スペースが3台分あり、車いすの乗降がしやすい優先駐車スペースは5台分あります。また、駐車場には、男女別の多目的トイレも完備されています。
次に「温室」へ。ここへ行くには約50mのゆるやかな坂を上がる必要があります。車いすの自走が厳しいと感じたら、介助者がいる方は、無理せず介助をお願いしましょう。「温室」では熱帯・亜熱帯の植物を中心に、約1,000種の貴重な植物が展示されています。「温室」の中は高温多湿です。車いすユーザは、ハンドリムが湿気で滑りやすくなります。アップダウンのある通路が多いので、車いすの走行には注意が必要です。
旧洋館御休所周辺
最後に、1896年に建てられた「旧洋館御休所」へ。スティックスタイル(木骨様式)を基調とした美しい木造洋館です。入口が階段のため、残念ながら、こちらは車いすのまま入館することはできません。
ここから、スタート地点の新宿門へ戻ります。途中、「旧新宿門衛所」付近で一部未舗装の通路が所々にありましたが、無事に到着。所要時間は、休憩を含めて計4時間でした!
施設情報
所在地:〒160-0014 東京都新宿区内藤町11番地
開園時間や休園日等は、下記の公式HPよりご確認ください。
新宿御苑サービスセンター:03-3350-0151
(受付時間)午前9時から閉園30分後まで(新宿御苑の休園日除く)
新宿御苑は、まさにこれから桜やバラなどが見頃を迎えます。今回は「UDマップ」を参考に移動しましたが、季節ごとの植物が把握できる「新宿御苑のみどころマップ」もおすすめです。
また、車いすユーザとして嬉しかったのは、多目的トイレの充実ぶりです。一般的な公園では1か所に1つのみ設置されていることが多いですが、新宿御苑では男女別に分かれていたり、複数設置されていたりしました。敷地内にある多目的トイレは、なんと全部で17か所!
みなさんも都会の喧騒を忘れて、豊かな自然の中でゆったりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?





