人に喜んでもらえる絵を描きたい!アート社員として働くSioさんにインタビュー

今回ご紹介するのは、NTTクラルティ株式会社(以下、NTTクラルティ)でアート社員として働くSio(シオ)さんです。NTTクラルティは、NTT株式会社の特例子会社(注1)として障がい者雇用を推進しています。
Sioさんは2023年2月から、自宅がある三重県を拠点に、絵画制作をメインとした在宅勤務を行っています。アート社員として働くことになった経緯や、今後の目標などについてお話を伺いました。ぜひ、ご覧ください。

(注1)障がい者の雇用促進を目的に設立され、障がい者が働きやすい職場環境が整備された会社です。特例子会社で雇用されている障がい者は、親会社の法定雇用率に算定できます。

写真:植物や自然、恐竜などの作品を背景にシオさんが絵を描いている

主な活動歴

Sio(シオ)
・2019年夏頃:独学でデジタル絵画を描き始める
・2021年1月頃:アクリル絵の具など、アナログ画材での制作も開始
・2022年11月:「NTTアートコンテスト」D&I賞 受賞
・2023年2月:NTTクラルティにアート社員として入社
・現在:ちぎり絵や水墨画など、新しい表現に挑戦中

障がいをきっかけに絵を描き始めるまで

写真:笑顔でインタビューに応えているシオさん私は幼少期から絵を描くことが好きで長時間描き続ける子供でしたが、大人になると自然と絵を描くことからは遠ざかっていました。
私は主に事務や接客などの仕事をして働いていたのですが、「周囲の人と何かが違う」という違和感を抱きながら必死に社会に馴染もうと「擬態」して日常生活を送っていました。しかし、人間関係などで仕事が長続きしないということを何度も繰り返していました。そんな中、30代半ばで自閉スペクトラム症(注2)の診断を受けたのです。

(注2)対人関係を築くことの難しさや、強いこだわりを特徴とする発達障がいの一つです。

今から10年、15年ほど前でしょうか、自閉スペクトラム症の認知が広がり始めていた頃、「自分にとても当てはまるな」と感じたことをきっかけに受診したところ、自閉スペクトラム症と診断されました。それからは、無理をして周囲に合わせずに「自分らしくいよう」と思い、再び好きな絵を描くようになりました。

その後は、障がい者雇用として一般事務で5年間勤務しました。その会社では、周囲の支えもあり、社内のお祭り用のうちわやマップ制作など絵に関わる機会もいただきました。同じ頃、プライベートでも障がい者アート団体への登録や展示会への出展、グッズ化といった経験を重ね、「本気で絵を描く仕事がしたい」という想いが強まっていきました。
その想いを形にするため、前職を退職しました。それから1年足らずの頃です。「NTTアートコンテスト」が開催されることを知り、応募してみたところ、D&I賞を受賞したのです。これが大きな転機となり、NTTクラルティから「アート社員として働いてみませんか?」とお話をいただいたのです。

現在は、会社から支給される画材やIllustratorの講習などのサポートを受けて活動し、NTTグループ各社へのアート作品のレンタル以外にもECサイトでのグッズ販売にもアート作品を使用していただいてます。

1日のルーティンとインスピレーションの源

普段は三重県の自宅で、デジタルイラストからアナログ絵画まで幅広く制作しています。週5日のリモート勤務をしていて、勤務時間は、10時から15時(お昼休憩1時間)の1日4時間です。
たまに制作に集中すると時間を忘れてしまうため、タイマーをセットして休憩を取り、音楽を聴いてリフレッシュするよう心がけています。また、2か月に一度は東京(東京都武蔵野市)のオフィスに出社し、額装(注3)作業も行っています。

写真:手漉き紙に絵を描いているシオさんと感性したやまゆりの絵

(注3)完成した作品を額縁に入れる作業のこと。

東京に出社する際は、博物館や美術館に必ず足を運び、インスピレーションをもらっています。作品のモチーフは、基本的に上司と意見交換をしながら決めています。最近は恐竜やお花を描くことが好きです。細かな点や線を、丁寧に描き込んでいくのが私の絵の特徴と言えるかもしれません。
また、私の作品に「トイトイ」というシリーズがあります。問題の「問い」と、おもちゃの「TOY」を掛け合わせた名前です。下描きをせず、思いつくままに模様を描き込んでいく手法で、昨年からシリーズ化しました。

写真:NTTクラルティのトイトイというタイトルでダイヤモンドをモチーフにした絵

私は普段、同じ服を何着も持っていたり、ルーティン通りに動くことで安心したりと、こだわりが強い性格です。しかし、絵に関してはとても流動的。これからも多様な画風に挑戦し、見る人に喜んでもらえる作品を描いていきたいです。

新たな表現への試行錯誤

今後は、NTTクラルティで作っている塩山ファクトリーの手漉き紙(注4)を使用して透明感のある墨彩画(注5)に挑戦したいと考えています。現在は、手漉き紙と相性の良いコーティング方法を模索しながら、日本画風の表現を練習中です。
これまでに描いてきたアクリル画とは対極の表現技法です。それでも、障がい者アートの分野で日本画を描く方はあまり見ないので、挑戦する価値があると思っています。これからも「トイトイ」シリーズでのコラボレーションや、ちぎり絵など、さまざまな試行錯誤を楽しみながら、見る人に喜んでもらえる作品を届けていきたいです。

写真:ドットが印象的な恐竜の絵を背景に日本画風の蟹の絵を持つシオさん

(注4)塩山ファクトリー記事はこちら(新しいウィンドウが開きます)

(注5)水墨画の技法を元に、仕上がりに水彩絵の具や顔彩などで着色した絵のこと。

イラスト:編集後記

写真:インタビュー中のシオさんと編集部員今回は、アート社員として働くSioさんのインタビューをお届けしました。自閉スペクトラム症は外見からは分かりにくく、大人になってから診断を受ける方も少なくありません。特性を理解することは、自分に合った働き方を見つけるための重要な一歩となります。
Sioさんの場合、診断を受けたことでご自身の進むべき道が明確になったように感じました。
普段は「こだわり」を大切にされているSioさんが、絵に関しては「求められればどんなものにでも挑戦したい」と柔軟に語ってくださったのが印象的でした。Sioさんの生み出す作品が、これからも多くの人を驚かせ、笑顔にしていくことを願っています。

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