「美」のプロフェッショナルの資生堂ジャパン株式会社は、長きにわたり「化粧のちから」を通じて、あらゆる方々の自分らしく、心豊かな生活を実現するために取り組んでいます。
2019年には、視覚障がい者が“自分で”実践できる化粧法を学ぶための講座「ガイドメイクセミナー」を開講し、今日まで多くの受講者を笑顔にしてきました。
今回は、開発者の下堂園直子さんと、セミナー講師で資生堂ソーシャルエリアパートナーの阿部洋子さんにお話しを伺いました。ぜひ、ご覧ください。
資生堂ジャパン株式会社
資生堂では、1949年、高校卒業予定者を対象に社会人の「身だしなみ」としての化粧法を知っていただくため、「整容講座」をスタートしました。
この「整容講座」は、すべてのお客さまに美しくなっていただきたいという想いのもと、時代の変遷とともに、高齢者や障がいのある方など、参加者や目的に応じて内容を変え、資生堂ライフクオリティー ビューティーセミナーとして発展してきました。
選び抜かれた精鋭コスメたち
聞き手:ガイドメイクセミナーで使用している化粧品は特別なものではなく、市販のものですか?また、どのような理由で選ばれているのですか?
下堂園さん:そうです。特別なものではないです。
視覚に障がいのある方に使いやすいという観点で商品を厳選しています。例えばアイシャドウはクリームタイプを使っています。
一般的なアイシャドウは粉末が多く、目の周りに粉が飛んでしまい、触ったら顔中についてしまったと、おっしゃる方が多いんです。そうならないようにクリームタイプを選定しました。
アイブローはスティックのパウダータイプを使っています。
ペンシルタイプだと線で描くことになり、その場合はみ出したときに修正が難しくなってしまうので、パウダータイプを使ってふわっと描いていきます。
口紅は、ヒアリングした当事者の方に「絶対斜めカットの方が塗りやすいからね。」とアドバイスをいただいて、先端が斜めカットのものを使用しています。
スキンケアは1回の使用量がわかるようにディスペンサータイプを、ファンデーションはおしろい用のパフでふわっとつけることで、ムラになりにくくなります。
“メイクって楽しい!”を引き出すガイドメイク講座の3つのポイント
”参加型”が”楽しい!”のカギ
聞き手:参加者の方の反応は「楽しい!」というのがとても多いようですが、それを引き出すコツは何でしょう?
下堂園さん:最初に講師、テーブル担当が自己紹介をします。その際に、例えば私だったら、名前の漢字の説明をする際に、上下の下にお堂の堂に公園の園って書いて、下堂園(しもどうぞの)と読みますとお伝えします。
また、参加者の方にも最初と最後にひとことずつご挨拶をしていただきます。それによって参加しているという、一体感を作りたいと思っています。
それと、講座中に「ここまでよろしいですか?」など声掛けをして、反応をみながら進めることも大事にしています。
阿部さん:
講師やテーブル担当が一方的に話しをするのではなく、参加者同士で会話を楽しんでいただいたり、途中で質問をはさんだりすることで、話が膨らむような気がしますね。対話式にした方が盛り上がります。
たまに収集がつかなくなっちゃうんですけど、それもひとつの楽しんでいただける要素なのかなと思っています。
もうほんと賑やかで、こっちが制止しないと、話しが止まらないくらいです(笑)
下堂園さん:この間も、アイシャドウを塗った方の隣の弱視の方が、目元のキラキラが見えたらしく、「えー!すごくキラキラになってますね!」って。そこから会話が始まって、それを聞いて、他のテーブルでも「私もそれ使いたい!」という声が聞こえてきたりしていました。
色を選ぶ楽しさ♪
聞き手:メイクは選ぶことも楽しみのひとつだと思うのですが、色を選ぶときはどのように選んでいますか?
下堂園さん:バリエーションがありすぎても迷ってしまうので、口紅ですと色あいの違う6色を用意しています。
例えば、ピンクと言ってもいろいろなピンクがあるので、「桜の花びらのような淡い色です」など、具体的なイメージがしやすいようにお伝えしています。
そして、実際に色を決めるときは、可愛らしくとか、少しエレガントに見せたいとか、参加者の方の希望を伺ったうえで一緒に決めます。
阿部さん:例えば、今日の洋服に合わせたいとか、そういう要望もあります。
アドバイスが欲しいと言う方もいます。そういうときには、肌のトーンや髪色など、トータル的に見てご紹介する場合もあります。
1人ひとり、話しをきちっと聞けるように、テーブルでは2人に対して1人のスタッフがつきっきりで対話をしながらサポートするようにしています。
きれいになっている自分をイメージしやすい
聞き手::講座の中ではどんなお話しをするのですか?
阿部さん:スキンケアの基本のつけ方でも、「自己流でやっていたけれども今日参加して感動した」と話してくださる方も多いです。
一番近くで話しをするのはテーブル担当なので、そこで「綺麗についてますよ」とか「大丈夫ですよ」など、頻繁に声掛けをするようにしています。
下堂園さん:褒めることはすごく大事で、ただ「綺麗ですね」ではなくて、「今日のお洋服にもこの口紅が似合っています」とか、「肌が綺麗に見えますよ」とか、具体的にお伝えします。
具体的に言われるから、心からの言葉としてちゃんと伝わるんです。
手で触ってわかる使用量見本を使って加齢対策をガイド
聞き手:加齢対策についてもガイドしてくださるとのことですが、どのようなことでしょうか?
下堂園さん:特別なことではないのですが、化粧水と乳液を正しい使用量、使用法で毎日続けることでうるおいのある健やかな肌を保つことにつながるとお伝えしています。
使用量は本当に大事なので、イメージができるように、サイズが手で触ってわかる使用量スケールを使って説明しています。
上に黒いシートを置いて、コントラストが出るようにした白いトレイに、化粧水は500円玉、乳液は10円玉、下地はパール粒のサイズに作られたスケールを置いて、触って確かめてもらいます。
『化粧のちから』
下堂園さん:「今日、大切な人に会いに行くわ」そう言って帰られる方がたくさんいます。
「外出したい」「大切な人に会いたい」その気持ちを後押しするのがガイドメイクのひとつの役目だと思っています。
視覚に障がいがあって、ご自身では見えなくても、周りから「綺麗だね」とか「今日素敵ですね」と言われることで、また誰かと会いたくなる。そういう気持ちに繋がってくれるといいなと思っています。
資生堂 ライフクオリティービューティーセンター
資生堂ではその他にも、深い肌悩みをお持ちの方向けに「資生堂ライフクオリティー メイクアップ」の活動として、専用商品「パーフェクトカバー」の開発や、「資生堂 ライフクオリティービューティーセンター」でのトータルメイクのご提案など、さまざまなサポート活動に取り組んでいます。
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