障がい当事者が参加した国際福祉機器展『みんなの会議』

2023年10月17日掲載

みなさんは、アジア最大規模の福祉機器の展示会が日本で毎年行われていることをご存じですか?
2023年9月27日から29日に東京ビックサイトで開催された国際福祉機器展。ハンドメイドから最先端技術を活用した介護ロボット・福祉車両まで、世界の福祉機器を集めた展示会で今回で50周年を迎えました。
2023年は”クリエイティブな未来を拓く”をテーマに多彩な企画が展開。その中の特別企画として、「『みんなの会議』~伝え、伝わる工夫展~」が実施され、3日間の来場者数は11万人を超えました。
今回は、この「みんなの会議」に車いすユーザの編集部員が参加しました。障がい者の雇用環境に役立つグッズもご紹介しますので、ぜひご覧ください。

写真:国際福祉機器展の看板

「『みんなの会議』~伝え、伝わる工夫展~」とは

写真:みんなの会議のイラストパネルさまざまな障がい者が同時に参加できるよう、配慮や工夫が施された会議です。参加者は、聴覚や視覚に障がいのある人へ向けて話し始めるときに自分の名前を言い、聴覚に障がいのある人に向けての話終わりは手話で「終わり」と合図をしました。
また、車いすユーザが会場に入りやすいようにスロープが設置されていたり、聴覚に障がいのある参加者や会場のお客さま向けにそれぞれ手話通訳者や要約筆記も配備されました。

グッズ・アイテムの展示

会議の実演のほかにも、みんなが参加できるよう音声認識で文字表示する透明ディスプレイや、膝の位置が高い車いすでも利用できるように高さを調節できるテーブルなどのUDグッズも展示されていました。

写真:昇降式デスクと字幕の出る透明ディスプレイ

会議内容の一部をご紹介!

司会者を除く、春風亭昇吉師匠と視覚・聴覚・車いすの4名の参加者で実演しました。
3日間を通して9回の実演が行われ、それぞれテーマ(会議、コンビニ、ツアー、落語など)を設けてディスカッションを行いました。
それぞれの障がい視点の良いと思うところ、自身の障がいはもちろんのこと、他の障がいのことも考えた改善案を話し合いました。今回はコンビニをテーマとしたときの会議模様をご紹介します。

テーマ:コンビニ

春風亭昇吉師匠: では、車いすユーザの視点で感じるコンビニのいいなと思うところはありますか?

車いすユーザ: コーナーの天井にある鏡が便利です。
目線が低い車いすユーザは棚の向こうにいる人影に気づきにくいことから出会い頭にぶつかりそうになることがあるのですが、天井にある鏡をみれば、そういった危険を察知できるので便利だと思います。

聴覚障がい者: 聴覚障がいのある立場でも、足音に気づきにくいので鏡は便利に感じます。

視覚障がい者: 見えにくい、見えない立場からすると、さすがに鏡はあまり役に立たないですが…(笑)
見えないで言うとセルフレジが大変です。タッチパネルはどこを押せばいいのか分からないので操作しにくいです。
なので、読み上げ機能がついてくれると視覚障がい者も使いやすくて便利になるのにと思います。

会場で、春風亭昇吉師匠と視覚障がい者、聴覚障がい者、車いすユーザが「みんなの会議」をテーマに話し合っている

聴覚障がい者: 私は店員さんとの会話が難しいときが多いので、一人で完結できるセルフレジは便利です。
会話せずに済むのが楽なので、セルフレジがあるお店ではついついそっちで決済してしまいます。

車いすユーザ: セルフレジは、見えにくい、見えない立場では不便な反面、聴覚障がいの立場では会話がいらず好んで使われているんですね。
車いす目線でも、操作しやすい高さにあることが多いので便利だと思います。
また、私は手先にもマヒがあるので、ボタンではなくタッチパネルである所も操作が楽で便利だと思います。
視覚障がい者にとって、タッチパネルを単純に読み上げるだけでは、触ってる場所や他のタッチ項目までの距離が分かりにくく視覚に障がいがある人は扱いにくそうです。
また、読み上げてもらうためになぞった場所が「選択」したことになってしまい、毎回「戻る」を押すのも面倒です。
なので、なぞっても「選択」したことにならないように、「選択」のときは2回タップするといった仕様になれば良いですね。

『みんなの会議』ご担当者(共用品推進機構)からのコメント

国際福祉機器展では、約380社の企業・団体が出展するブースと主催者の企画ブースで構成されています。共用品推進機構では、主催企画の一つである生活支援の機器を展示するブースの企画・運営の依頼を受け、今までに「片手で使えるモノ展」、「元気に働く10のコツ展」等を行ってきました。そして今年度は、NTTクラルティさんに協力いただき、「『みんなの会議』~伝え、伝わる工夫展~」と題して、製品展示、バリアフリービデオの上映の他、そしてみんなの会議の実演(デモンストレーション)を行いました。
9回の実演は全て満席となり多くの方々に『みんなの会議』を行うためのコツを伝えることができました。

イラスト:編集後記

写真:会議で発言する車いすユーザ編集部員が参加したみんなの会議、いかがだったでしょうか?
国際福祉機器展は毎年秋に3日間行われ、今回は特別企画として『みんなの会議』が開かれました。
自身の障がいだけでなく、他の障がいについての理解を深めることで、単純に自分が過ごしやすいだけではバリアフリーにはならないという気づきを得ることができました。
『みんなの会議』の開催は今年だけですが福祉機器展自体は毎年行われていて、近年ではWeb展も公開されているのでチェックしてみてはいかがでしょうか?
国際福祉機器展についてはこちら(新しいウィンドウが開きます)

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