世界最軽量級!マグネシウム合金製の新世代車いす!

アクティブに車いすを乗りこなすユーザの中には「もっと軽い車いすがあったらいいのに」と思っている方も多いのではないでしょうか。車いすは軽ければ軽いほど、少しの力で操作でき、車に積み込んだり、介助者が持ち上げたりする時にもとても助かります。

標準的な車いすの重さは約12キログラムで、アクティブモデルといわれる軽量タイプのものでも9キログラム前後が一般的となっていますが、今回ご紹介する「MC-X」と「X70」はそれぞれ6.2キログラムと7.0キログラムという超軽量の車いすです!

そこで今回、車いすユーザのゆうゆうゆう編集部員がこの2台を徹底チェック!開発メーカの社長さんにもお話を伺いましたので、是非ご覧ください。

写真:MC-Xの白い車いすに乗った女性の横と正面

MC-XとX70とは

MC-Xは、2014年に日本初のマルチマテリアル車いすとしてデビュー、マグネシウム合金を使った圧倒的な軽さと斬新なデザインから車いす業界関係者の間に衝撃が走りました。MC-Xのモノコック構造のフレームは軽さと乗り心地に徹底的にこだわったリジットタイプ(固定式)で、試乗すると漕いだ力が余すとこなく伝わり、本体の軽さと相まって非常に軽快に操作することができます。一漕ぎでスペックだけではないことを実感できる車いすです。

一方、今年デビューしたX70もマグネシウム製の車いすですが、より利便性を高めるためにフォールディングタイプ(折り畳み式)となっており、簡単に車などへ積み込めるモデルとなっています。一般的にリジットタイプに比べ大幅に重量が増してしまうフォールディングタイプですが、マグネシウムパイプをつかったクロスメンバー(注1)を開発・採用することで高剛性と軽量化を両立させることに成功しています。こちらも試乗してみると、ダブルブレース(注2)のクロスメンバーが生み出す剛性感と、フォールディングタイプとは思えないほどのダイレクトな操作性を体感できました。

◀MC-X写真:青いフレームのMC-X
メインフレームにマグネシウムを採用しつつ、各パーツにチタンやカーボンといった素材を使用したマルチマテリアル車いす。
フレーム単体ではわずか1.9キログラムという脅威のスペックを誇る。

X70▶写真:黒いフレームにオレンジ色のハンドリムのX70
クロスメンバーをマグネシウム製としたフォールディングタイプの車いす。高いマグネシウム加工技術によりダブルブレースでも圧倒的な軽さを実現。高剛性と折り畳める使い勝手のよさを両立させている。

注1:左右のフレームをつなぐX形状のパイプ。「クロスバー」「エックスバー」とも呼ばれる。
注2:2対のクロスメンバーでフレームを支えること。一般的に重量はシングル(1対)ブレースより重くなるが、剛性感で勝る。

MC-XとX70の特徴

ポイント1

世界最軽量級の軽さ

写真:マグネット式のフラップを片手で開いている様子MC-XとX70の最大の特徴はなんといってもその軽さです。上記のとおり、MC-Xの6.2キログラム、X70の7.0キログラム(駆動輪込み)という重さは市販されている車いすの中でも最軽量級の軽さで、片手でも楽に持ち上げることができます。また、このような超軽量級の車いすは、オーダーメイドタイプかサイズ調整がほとんどできないモデルが多いのですが、MC-XとX70はモジュラータイプでユーザは好みに合わせたサイズを選択可能です。

ポイント2

「マグネシウム合金」という素材

圧倒的な軽さの理由はフレームに使われている素材「マグネシウム合金」にあります。
マグネシウム合金は実用金属の中では最も軽い素材で、従来の車いすに多く使われているアルミや鋼よりも比強度・比剛性面でも優れています。また、振動の吸収性も高く、快適な乗り心地にも一役買っています。
まさに、マグネシウム合金は車いすの理想的な素材といえますが、加工が非常に難しいため、世界でも数モデルしかマグネシウムフレームの車いすは存在していません。

イラスト:マグネシウム、アルミ、チタン、鉄の質量と比強度と比剛性を比較した棒グラフ。詳細は上記文章参照
ポイント3

グッドデザイン!!

写真:グッドデザインの賞状MC-Xはデビューした2014年にグッドデザイン賞のBEST100を車いすで初受賞し、X70も今年のグッドデザイン賞を受賞しました。
特にMC-Xのモノコック構造の特徴を生かした従来の車いすにはない立体的なフレームワークは、軽さだけではなく見た目においても新世代の車いすと呼ぶにふさわしい未来的なデザインとなっています。

写真:福祉展での車いすのディスプレィ

開発メーカの社長さんに伺いました

MC-XとX70を開発したのは静岡県浜松市にある橋本エンジニアリング株式会社。
自動車やオートバイ部品の金型設計製作を基盤事業とする同社が、なぜ世界最軽量級となる車いすを生み出すにいたったのか、その背景を同社の橋本社長に直接伺いました。

聞き手: 車いすを製作しようと思われたきっかけを教えてください。

橋本社長: 弊社は長らく金型や治工具の製造下請けとしてやってきましたが、2008年のリーマンショックで経営的に大きな影響を受けました。そこで、下請けだけではなく、何かオリジナル製品を生み出し、自分たちがメーカとなる必要があると考えました。

聞き手: そこで、なぜ「車いす」だったのでしょうか?

橋本社長:写真:身振り手振りを加えて話す橋本社長 新しい製品は何が良いかと社内でもいろいろと検討しました。その時にあがったのが、「ユーザの役に立つ」「世の中のためになる」「自分たちの技術を生かせる」でした。これらを満たして自分たちが下請けから脱却しメーカになれるのであれば、まさに「三方よし」だからです。
その思いで様々な業界の方の話を聞いたり、展示会を見学したのですが、その中の一つが介護福祉の業界でした。そして、いろいろな福祉機器展を見ていくうちにわかったのが、どこの車いすメーカも軽量化に力を入れているということです。 ただ、確かに軽いのですが、とても値段が高いということに驚き、同時に「これだ!」と思いました。

聞き手: 「これだ」というのは?

橋本社長: 下請けとして培ってきた技術、マグネシウムという素材を使えば、カーボンなどを使った高級な軽量車いすと同等の軽さの車いすを、価格を抑えて作れるのではないかと思ったのです。

聞き手: 確かに、チタンやカーボンを使った超軽量級の車いすの値段は60万から高いものは100万円前後しますよね。

橋本社長: はい、それはそれで買える方もいらっしゃるとは思いますが、私たちの技術を使って、軽量な車いすをアルミ製と同等の価格でお届けすることができれば、より多くの方が動きやすい車いすに座ることができる、大げさに言えば社会の役に立つことになるのではと。

聞き手: そうですね、マグネシウムは溶接によりサイズのバリエーションが生み出せます。カーボン製よりももっとユーザの選択肢を増やし、ユーザの体に合わせることも可能になりますよね。
それにしても、マグネシウムは加工が難しいと聞きますが、開発は大変だったのではないですか?

橋本社長: 大変でした(笑)。確かにマグネシウムはそれまでも扱っていましたが、やはりゼロから車いすを創るとなると色々とありました。しかし、私たちの浜松はオートバイの町です。高い技術を持った企業や匠のエンジニアたちがいますので、一丸となって協力することでMC-Xを完成させることができました。

聞き手: 今年登場したX70はMC-Xとは全く違いますよね。折り畳むことができますし。

橋本社長:写真:インタビューに笑顔で答える橋本社長 MC-Xは、その軽さや見た目、乗り心地で多くの方々から高い評価をいただきましたが、同時に「フォールディングタイプ(折り畳める)が欲しい」という声も数多くいただきました。欧米ではMC-Xのようなリジットタイプ(折り畳めない固定式)が主流ですが、日本ではやはりフォールディングタイプの人気が高いですので。
そこで、できるだけ多くの方に軽い車いすに乗っていただくためには、これは挑戦するしかないと思いX70を開発しました。

聞き手: 私も、上肢障がいがあるのでフォールディングタイプの車いすでないと、自動車に積み込むのが難しいのですが、X70が登場したおかげで私もマグネシウム車いすに乗れるチャンスが来たなと思いました!

橋本社長: 是非、一台いかがですか(笑)。今回X70を開発したことで、逆にMC-Xにも改めて注目していただいています。2つのタイプができたことで相乗効果も生まれています。

聞き手: リジットタイプとフォールディングタイプを選択できるというのはユーザにとってはとってもありがたいです。

橋本社長: 私たちの技術を生かしたモノ創りで、ユーザに喜んでもらえるものを生み出し、それを手の届く価格で多くの方に届ける。これからもお客様の声を聴きながら技術を磨き挑戦を続けていきたいと思います。

聞き手: これからも革新的な車いすの登場を期待しています。本日は貴重なお話をありがとうございました。

会社情報

イラスト:橋本エンジニアリングのロゴ会社名:橋本エンジニアリング株式会社
所在地:静岡県浜松市浜北区平口5559(本社)
TEL:053-587-6508
*車いすの購入は全国の販売代理店からとなります
『橋本エンジニアリング株式会社』についてはこちら(新しいウィンドウが開きます)

イラスト:編集後記

10月に開催された国際福祉機器展H.C.R.2018ではMC-XやX70だけでなく、開発中の新モデルや2020年を見据えたパラアスリート用の競技用車いすも展示していた橋本エンジニアリング。これからもその動向は要チェックです!
本記事作成にご協力いただいた橋本エンジニアリング高野様、橋本社長ありがとうございました。この場をかりてお礼申し上げます。

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