無添加素材にこだわる車いすパティシエ

2月14日は、バレンタインデーですね。
お店の売り場に漂うチョコレートの甘い香りに包まれると「幸せな気持ちになる」という人も多いのではないでしょうか。
そこで今回ご紹介するのは、体に優しい無添加素材にこだわったケーキやお菓子を作っている車いすパティシエの西村泰久さんです。
バレンタインデーに向け準備に忙しいなか、千葉県松戸市にある「パティスリーみつ葉とはーと」へ伺い、編集部員がインタビューしてきました。

写真:ショーケースに10種類ほどのケーキが並んでいる様子

西村泰久さんはこんなパティシエ

写真:コックコートを着た西村さん
  • 19歳で筋ジストロフィー(注1)の診断を受ける
  • 東京會舘(とうきょうかいかん)でパティシエとして20数年間働く
  • 2015年12月より、「パティスリーみつ葉とはーと」オーナーパティシエとして働いている

店舗情報

住所:〒270-2267 千葉県松戸市牧の原2-48
連絡先:047-710-7301
営業時間:11:00から18:00
(電動車いすユーザも利用できるトイレを完備)
「パティスリーみつ葉とはーと」についてはこちら(新しいウィンドウが開きます)
(注1)筋肉の力が徐々に低下していく難病

写真:左にお店の入り口、右にお店の電動車いすでも入れるトイレの様子
イラスト:みつ葉とハートをモチーフにしたライン

オーナーパティシエの西村さんは、筋肉の力が低下していく「筋ジストロフィー」という難病で、現在は電動車いすで生活されています。

パティシエを始めてすぐに・・・。

聞き手: 西村さんはパティシエとしてご活躍されていますが、「筋ジストロフィー」と診断されたのは、いつ頃だったのでしょうか?

西村さん:写真:西村さんにインタビューをしている様子 東京都丸の内にある「東京會舘」にパティシエとして就職してまもなくです。働いているとケーキの材料となる「卵・小麦粉・砂糖」など、重いものを持たなければならないのですが、同僚が持ち上げることができるのに私は上げられなかったのです。それで会社の人たちから「おかしい」と言われ、病院に行き調べてもらったら、「筋ジストロフィー」と診断されました。
その頃はまだ、病気のことは何も分かっていませんでしたが、子供の頃から何か他の人とは違うと感じてはいました。例えば、高校の頃から立ち上がる時、他の人はひょいと立てるのに、私の場合は下に手をつかなければ立てなかったのです。ずっとおかしいなとは思っていたのですが、普通に動けていたのであまり気にしないようにしていました。

聞き手: ほぼ就職と同じタイミングだったのですね。東京會舘はいつ頃まで働いていたのですか?

西村さん: 25年ほど働きましたので、「やりきった」という感じです。
徐々にパティシエとして働くのが難しくなり、最後の5、6年は事務をしながら現場を手伝っていました。職人気質の人たちばかりだったので、普通に接してくれたのが私にとっては嬉しかったです。

イラスト:みつ葉とハートをモチーフにしたライン

「車いす」や「人」との出会い・・・。

聞き手: いつから「車いす」を利用するようになったのでしょうか。

西村さん: 今から12年前、42歳でした。
車いすを利用する前までは、「車いすに乗りたくない」「車いすに乗ったら自分は終わりだ」と思っていました。少しずつバリアフリーにはなってきていましたが、外出することが難しくなると思っていたのです。「電動車いす」の存在すら知りませんでした。
しかし、電動車いすに乗ってみたら色々な所へ行けるようになって、世界が変わったという感じでしたね。「こんなに良いモノ。なんでもっと早く乗らなかったの!」と言う人もいたほどでした。
ですが、「もう歩けない」という限界まで車いすを使わなかったからこそ、今の自分があるのだと思っています。そうでなかったら、たぶん今頃何もしないで家に閉じこもっていた可能性があったかもしれません。

聞き手: 退職なさってからはどうしていたのでしょうか。

西村さん: 退職してからは、何をしてよいか分からなかったので、近所の福祉センタに通い陶芸や墨絵を始めました。そこには、全く目が見えない人がいて陶芸でお皿や色々な物を作っていたのです。
その人は、すごく明るく活動的でボランティア活動も行っていました。私もその人から紹介されボランティア活動としてパティシエの経験を生かし、子供たちにお菓子教室をするようになりました。
そこでは、色々な人との出会いもあり、妻とも出会うことができました。彼女は元々介護福祉士で、目の見えない人のガイドをしていて知り合いました。

画像:左からいちごのホールケーキ、お店の営業時間や定休日がかかれたボード、かんきつ類のホールケーキ

「パティスリーみつ葉とはーと」を始めて・・・。

聞き手: 車いす生活になってから、色々な人との出会いがあったのですね。そうした中、お店を始めようと思ったきっかけはなんだったのでしょう?

西村さん: さきほど話をした「お菓子教室」の経験もありますが、妻と一緒になろうと思ったことが大きなきっかけでした。
最初は、ケーキ屋というより障がいのある人たちを集めて福祉作業所的なことを考えていたのです。
そして、県や市に行き申請をしようと思っていたのですが、お店の広さや利用者の数などの条件をクリアすることができませんでした。それだったら、自分たちでお店を開こうということになりました。

聞き手: こちらで作られているケーキは、無添加素材などにこだわっていらっしゃいますね。

西村さん:写真:スポンジに生クリームを塗っている様子 そうですね。特に、お子さんには、本当に安心で安全なものを提供したいという思いがあります。
シンプルというか、昔ながらのケーキはありそうですが、素材本来の味を活かして、おいしいと言ってもらえるケーキを作りたいからです。そのため、極力農薬を使わないで育てられた素材を選んでいます。
無添加のケーキは、原材料費と時間がかかりますが、私は素材本来の味をおいしいと感じてもらいたいので、こだわります。
ただし、季節物のフルーツのため短期間で商品が入れ替わります。手間暇かかりますが、作る楽しみもあり、一番嬉しいのは、お客さまがケーキを食べて喜んでくれた時ですね。

聞き手: 最後に、お店の今後について目標など教えてください。

西村さん: 目標は、10年続けることです。
10年、私の体がこのまま動いてケーキ屋を続けたいというのが一番の目標です。それと、今以上に色々なケーキを作りたいと思います。
作る楽しみもありますし、何よりお客さまが、ケーキを食べて喜んでくれることがうれしいです。
これからもお客さまみんなが笑顔になるケーキを作り続けたいです。

聞き手: ぜひ、たくさんの人たちにおいしいケーキを作ってください。
本日は、ありがとうございました。

イラスト:編集後記

写真:編集部員と西村ご夫妻 今回は、お店に伺い西村さんと奥様からお話をお伺いしましたが、ご夫婦の信頼関係がとても魅力的でした。お互いを信頼し、尊敬しあってこそ、今のお店を続けていけるのだと思いました。
筋ジストロフィーで徐々に筋力が低下し、パティシエで働くことを一度はあきらめた西村さん。
しかし、道具を使いやすく工夫したり、片手で生クリームを出せるように工夫したり、パティシエとしてもう一度働くことを決意したことは大きな決断だったと思います。
コックコートを着て、自分が作るケーキに絶対の自信とプライドを持って働いていらっしゃった西村さん。そして、その素材の良さと美味しさをお客さまに伝える奥様との明るい笑顔が素敵でした。
上質な生クリームを使用したケーキは、今まで味わったことがないほど軽い口あたりです。
無添加ケーキを味わってみたい人は、お店でも食べることができるので、ぜひ行ってみてはいかがでしょうか。

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