誰もが対等に対話を楽しめるエンターテイメントを目指して-part2-

写真:ダイアログ・イン・サイレンスのロゴ 前回からの「ダイアログ・イン・サイレンス」体験レポートに続いて今回は、総合プロデューサーであり、ダイアログ・イン・ザ・ダーク代表の志村真介氏にお話しを伺いました。

聞き手: 静けさの中で対話する「ダイアログ・イン・サイレンス」は、視覚に障がいのある私にとって、伝えることの難しさを感じた体験でした。
この対話を今年開催しようと思った経緯を教えてもらえますか?

志村: 2020東京オリンピック・パラリンピックのときに、海外から多言語・多文化の方々が訪れます。
そのときに、私たちがおもてなしの気持ちを表せるかと言うと、半歩引いてしまったり、目を伏せてしまったりと少し距離を置いてしまう自分がいます。
ダイアログ・イン・サイレンスは、そうした多言語の人たちが参加しても一緒に楽しむことができるのです。
もう少しわかりやすく言うと、言葉で何かを伝えるとき、使用している言語が違うとそこに通訳を入れますが、言葉でなくボディランゲージや身振り・手振りで対話するならそこに通訳は必要なく、お互いにコミュニケーションができるからです。
また、今回開催する場所は、海外のお客様が多く訪れる新宿で、かつ成田空港や羽田空港から到着する場所であるバスターミナル「バスタ」で開催することにしました。

聞き手: 確かに、東京オリンピック・パラリンピックについて関心が高まっている今、開催するのはいいタイミングだと思います。
今回初開催で、8月1日から20日間の期間限定でしたが、反響などはいかがだったでしょうか。

志村: 写真:参加者とアテンドのハイタッチしている様子 実は、ドイツの発案者は人が集まらないのではないかと心配していました。
なぜなら、日本人は、上手に人前で表現することができず、コミュニケーションが苦手だからという理由からです。
ところが、チケットはすぐに完売しました。「静けさの中の対話」って一体なんだろう?という興味がわいたのかもしれませんが、思っている以上に私たち日本人は、コミュニケーションに対する意識が高いといえるのかもしれません。
参加された方々は、体験が終わるとみな一様にいい表情をしていて、とても手ごたえを感じました。
また、アテンドの聴覚障がい者たちは、これまで少し閉ざした社会にいたけれど、毎日様々な人たちに出会って、自分たちのパフォーマンスで喜んでくれる人がいる、そう思うことでみんなの意識が変わっていきました。
その表情は月日が過ぎていく中で徐々に変わっていき、みんなが生き生きしていくのがわかります。その反面、開催が終わりに近づくにつれ、また以前のような障がい者に戻ってしまう寂しさを感じていたようです。
だから、このサイレンスを常設したいと強く思いましたね。

聞き手: このサイレンスの実施に向けて、参加者、アテンドの方々が楽しくなるようにどういう工夫をされたのでしょう。

志村: 写真:各国の手話が飛び交っている様子 イスラエルから研修チームが来て、アテンドに対して指導してもらいました。
実はイスラエルには、「ダーク」「サイレンス」「タイム」の3つのミュージアムがあり、年間約20万人の人が訪れています。
練習中は、日本語、英語、ヘブライ語、手話が飛び交い、言葉の壁だらけでした。
言語を置き換えていくので伝言ゲームみたいでしたが、ある瞬間から双方のアテンド同士が分かり始めるのです。
言葉を介さなくても分かり合えるという貴重な瞬間に立ち会うことができました。

聞き手: まさに言葉の壁がないということですよね。
それこそ、サイレンスの魅力と言えるのでしょうか。

志村: 写真:アテンドの手話を読み取っている様子 そうですね。 声を出さなくても表情で表現したり、身振りや手振りで伝えたりすることで、コミュニケーションはできるのです。
私たちはこれまで、暗闇の中で対話する「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を約20年開催してきました。
サイレンスとダークは聞こえない・見えないで違うと思うかもしれませんが、実は同じなのです。
一番は自分との対話ができること、これがダイアログシリーズの肝になります。
相手との関係性を調整するとか、アテンドとの関係性を調整するとかではなく、自分の在り方と対話できることが面白いのです。
きっと、自分自身のことを振り返って考えると思います。その気づきなのです。
誰が伝えるわけでもなく、それがダメと言うこともありません。
気づいたことによって考え方が変わって、今日から明日から、社会とのコミュニケーション、人間関係がより良い関係に進む可能性があるのが、このエンターテイメントの魅力です。

聞き手: 確かにそう思います。
体験してみて、自分のこと、どう表現したら伝えられるのかを考えました。
それでは、最後に今後の展望についてお聞かせください。

志村: ダイアログのコンテンツには、「ダーク」「サイレンス」もう一つ「タイム」があります。
このタイムは70歳以上の高齢者がアテンドを務めるものです。いずれみんな年齢を重ね、見えにくくなったり、聞こえにくくなったりします。
そうなることは、ネガディブに考えてしまいがちですが、その当事者たちと一緒に過ごして体験することで見えないからこそ見えてくる、聞こえないからこそ聞こえるとか、年を重ねているからこそ色々な経験をして学ぶことがあるという気づきが生まれるのです。
この3つを体験できるダイアログ・ミュージアムを作りたいと考えています。2020年の開館、それが今の私たちの夢です。

ダイアログ・ミュージアムについてはこちら(新しいウィンドウが開きます)

写真:タートルネック姿の志村さん そのミュージアムには人と人が出会って体験を通して語り合って気づきを得る場所にしたいと思っています。
また、視覚障がい者、聴覚障がい者、高齢者、その人にしかできない仕事を作っていきたいという思いもあります。
自分にしかできない仕事があるとモチベーションアップにつながり、障がい者の雇用が広がっていくと考えます。
そうすることで、ライフスタイルや価値観が変わっていき、多様な人々と共に生きる社会となり、自分たちの未来が超高齢化社会になったときに楽しく過ごせるヒントになるかもしれませんし、日本全体を良くしていくことにつながると思います。
2020年をいい機会として、そこがゴールではなく、スタートにしたいです。

聞き手: ステキな夢で、2020年が楽しみになりますね。
本日は、貴重なお時間をありがとうございました。

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