字幕付きCMによって見る・知る・購入する楽しみを提供 -花王株式会社の字幕付きCMに関する取り組み

2014年04月22日掲載

写真:女性が何かを干しているCM動画の一身に「おかえりなさい」と字幕が表示されている様子

今回、聴覚障がいのあるスタッフが、花王株式会社にお伺いして、字幕付きCMの取り組みについてインタビューした内容をご紹介します!
ぜひご覧ください。

聴覚障がい者の声をカタチに-字幕付きCM制作を開始

聞き手:御社では、字幕付きCMのトライアル放送をされていますね。

花王:はい。2012年10月5日から3回目のトライアル実施中です。
現在は「Beauty Recipe」毎週木曜日 夜10時54分(フジテレビ)、「A-Studio」毎週金曜日 夜11時(TBSテレビ系列)、「ぴかぴかマンボ」毎週土曜日 夜9時54分(テレビ東京)、「ワンダフルライフ」毎週日曜日 夜9時(フジテレビ系列)で見ることができます。

聞き手:すでに3回目のトライアル放送中なのですね。
いつ頃から取り組まれているのでしょうか。

花王:トライアル放送の1回目は2011年8月21日から9月18日の約1カ月間フジテレビ系列で、2回目は、2012年1月13日から4月27日の約3ヶ月間TBSテレビ系列で放送しました。3回目の現在は、終了期間を設けず実施しています。

聞き手:3年前から取り組まれているのですね。きっかけはあったのでしょうか?

花王:2011年2月に、社内で開催されたユニバーサルデザインに関する講演会で「CMの内容がわからない」「字幕をCMにも付けてください」と聴覚障がい者の方からお話しを伺ったことがきっかけです。

聞き手:2011年2月に要望があり、一回目のトライアルが同じ年の8月に行われていますよね。とても早い対応だと思いますが、ノウハウはあったのですか?

花王:いいえ。当時、テレビの字幕放送を見たこともなかったので、仕組みもわからなかったですし、まったく知識がありませんでした。

聞き手:ゼロからのスタートだったのですね!どのように進められたのですか?

花王:社内にプロジェクトチームを立ち上げて、字幕制作会社で見学をさせていただくなどし、字幕付きCM制作時でのルールなどを学びました。
試行錯誤しながらテスト版を作り、ニーズを調べるためアンケート調査を行ったりもしました。
このアンケート調査には社内はもちろん、聴覚障がい者団体や大学などにも声をかけ、社外の方にもご協力いただきました。

字幕付きCMの商品情報伝達以外の付加価値-「見る・知る・購入する」楽しみ

聞き手:反響はいかがでしたか?

イラスト:聴覚障がい者が手話でお話している様子花王:想像以上に反響が大きかったですね。
社内から約480件、社外から約200件の回答をいただいたのですが、「CMの内容が理解できて嬉しい」「続けて欲しい」「他社でも行ってほしい」など、肯定的な意見がほとんどでした。なかには、「字幕付きCMのおかげで、商品に興味が出て実際に購入した」という嬉しいコメントもありました。
字幕付きCMは、情報を伝える以上の付加価値があることを知り重要性を再認識しました。皆さんの期待に応えるためにも、やるからには続けることを前提に取り組んでいます。

聞き手:聴覚障がい者の方など、皆さんの反応が大きな力になっているのですね。
CMに字幕を付ける際に、工夫されていることはどんなことでしょうか?

花王:準備からトライアル放送実施まで、全て慎重に進めました。
CMは、商品だけではなく、会社全体のイメージをも左右しますので、特に字幕によってどのように伝わるか、ということにはすごく気を使っています。

聞き手:字幕がわかりにくいためにマイナスイメージになってしまっては、逆効果になってしまう、ということですよね。

花王:ええ。字幕付きCMの場合、「最低表示時間」が決められているほか、字幕の表示間隔などかなり制約があります。
たとえば、最初と最後の1秒間は字幕が入れられないので、15秒のCMの場合、13秒しか字幕表示ができません。
その短い時間で、情報を伝える必要がありますが、画面と字幕が被ってしまうと逆に商品などが見えにくくなってしまいます。
言葉の選択、文字の表示場所などは、制作現場に立ち会い、何度も繰り返し確認しています。

字幕付きCM制作時の工夫-より臨場感が伝わる文字情報を目指して

聞き手:時間と空間の制約、ということですね。ほかに工夫されていることはありますか?

写真:花王の字幕CM「ビオレ:大人の洗顔」花王:映像の演出効果をどうやって伝えるか、ということも大事だと思っています。昨年流行った「おもてなし」を例にしますと、ただ「おもてなし」と打つのと「お・も・て・な・し」と表現するのでは雰囲気が違いますよね。
このように、言葉と文字のニュアンスを表記方法でカバーできる部分がないか、ということも議論しています。
何回も見て確認しながら、CMの意図に合っているか、文字の出るタイミングがわかりやすいか、音声を実際に消して見て文字だけで伝わるかなどをチェックしています。

聞き手:確かに、文字情報は、感情の抑揚など伝わりにくいですよね。
今後の課題としては、どんなことがありますか。

花王:字幕放送の仕組みは、映像に字幕が付与されて放送されているわけではありません。
基本的には映像と音声の2つがあり、それとは別に字幕データが送られ、リモコンの「字幕」ボタンを押すと字幕が表示される仕組みになっています。
このため、吹き出しや文字の書体の変化によって見た目を楽しく、より臨場感を出してほしい、という要望も多くいただくのですが、対応することができません。
仮に、放送局に字幕データを送信できる設備が整っていない場合は、広告主(企業)が字幕付きCMを制作していてもCMに字幕を付けることができないこともあるのです。

聞き手:なるほど。そうしますと、放送局や広告主(企業)、字幕制作会社など、さまざまな業種・団体との関わりが出てくると思うのですが、現在、字幕付きCMに関するルールはあるのですか?

花王:2014年1月現在、ルール作りが進んでいます。
字幕付きCMは映像に組み込まれているわけではないので、文字こぼれなどの放送事故が懸念されています。
安全に放送するためのシステムづくりに、広告主(企業)、放送局、広告会社が協力して取り組んでいます。
ですが、現在の字幕付きCM放送は、放送事故を回避するために、一社提供番組に限られているのが現状です。

字幕付きCMの今後-ルール整備、1社提供番組から複数社提供番組の普及へ

聞き手:字幕付きCMのルール整備が必要ですね。国などは動いているのでしょうか?

イラスト:年配の方がこたつの中でテレビを見ている様子花王:国も力を入れ始めています。2013年9月に閣議決定された『新「障害者基本計画」』において、CM番組を含む字幕放送の普及に関する事項が盛り込まれました。
また、総務省では2014年1月から「スマートテレビ時代における字幕等の在り方に関する検討会」を開催し、字幕付きCM普及に向けた具体策の検討も行うとしており、ルール等が策定されることが期待されています。実際、2014年1月現在、弊社を含めて6社が字幕付きCMに取り組んでいますが、今後、増えていく予定です。
字幕付きCMは、広告主(企業)だけでは放送できません。利用されなければ普及もしません。だからこそ、私たちが字幕付きCMの制作を続け、字幕付きCMのメリットをお伝えしていくことは重要だと思っています。

聞き手:今後、字幕付きCMに関するルールが策定されることで、1社提供番組から複数社番組でも字幕付きCMが放送されるようになることなどが期待されますね。
私自身、聴覚障がいがあり、CMに字幕が付いているのを見た時、みんなと笑ったり、楽しめたりできたことは新鮮で、とても嬉しく思いました。
テレビ番組もCMも字幕で、そして音声ガイド等で、聴こえない人、見えない人、文字が読めない人…さまざまな人に情報が届くサービスが増えるといいですね。
御社の一層の取り組みに期待するとともに、CMも楽しみにしております。
本日は、どうもありがとうございました。

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