デフアスリート、4年に1度のデフリンピックにかける想い

みなさんは、ろう者(注1)だけのオリンピック「デフリンピック」があることをご存じでしょうか。パラリンピックは昨年リオで開催され、例年よりテレビで取り上げられることが多く、知っている方も多いかもしれません。
今回は、7月18日から30日までトルコで開催される「サムスンデフリンピック2017」の概要と、ゆうゆうゆう編集部が注目している自転車競技の日本代表として出場する、早瀬ご夫妻の意気込みなどをご紹介します。
(注1)聴覚に障がいがあり、手話をコミュニケーション手段として用いる人。

写真:自転車競技デフ日本代表の集合写真

デフリンピックとは

デフリンピックは4年に1度行われる、ろう者のためのスポーツ大会です。夏季と冬季の大会があり、国際ろう者スポーツ委員会が主催しています。デフリンピックの由来は「ろう者(Deaf)+オリンピック(Olympics)」の造語です。参加者が国際手話(注2)でコミュニケーションを取り、交友を深めてきた点が特徴的です。
(注2)国際補助語のひとつで、ろう者が国際交流を行う際に公式に用いるために作られた手話。

デフリンピックの歴史

デフリンピックは、1924年に設立された国際ろう者スポーツ同盟が、同年にパリで開催した「第1回国際ろう者スポーツ競技大会」が、その原点です。一方、パラリンピックの原点となる大会は、1948年にイギリスのストーク・マンデビル病院で行われたのが始まりと言われ、デフリンピックの方が古い歴史があります。
1989年に、国際パラリンピック委員会が発足した当時は、国際ろう者スポーツ委員会も加盟していましたが、1995年に組織を離れました。
パラリンピックはリハビリテーション重視の考えで始まりましたが、デフリンピックは当初から、ろう者間による記録重視を目的に開催されています。
現在は両方とも障がいの存在を認めた上で競技における「卓越性」を追及している考えに変わっています。

デフリンピックの参加条件

  • 裸耳で聴力損失が55デシベル (注3) を越えていること
  • 全日本ろうあ連盟加盟団体に登録していること

(注3)デシベルは音の大きさを表します。

20から100dBまでの一例
100dB 電車が通るときのガード下
80dB 地下鉄の車内、電車の車内、ピアノ
60dB 走行中の自動車内、普通の会話、トイレ(洗浄音)
50dB 静かな事務所、クーラー(屋外機、始動時)
40dB 市内の深夜、図書館、静かな住宅の昼
20dB 木の葉のふれあう音、置時計の秒針の音

デフリンピックの主なルール

  • 公平性を保つために補聴器を装用することは禁止されています。
  • コミュニケーションは全て国際手話を使います。
  • 競技のスタート合図や審判の声を手話などで表現すること以外は、オリンピックと同じルールです。
    例:短距離走の場合はスタートラインの前にランプがあり、「位置に ついて」で赤く光り、「よーい」で黄色に、「ドン(号砲)」で緑色に点灯することで競技スタートがわかる仕組みになっています。

サムスンデフリンピック2017

以下の表は夏季大会21競技です。(*日本人選手が出場する競技です。)

ビーチバレーボール* バレーボール* サッカー* 陸上*
バスケットボール バドミントン* 卓球* 柔道
マウンテンバイク* テニス* 空手* 水泳*
ボウリング テコンドー 射撃 自転車*
レスリングフリースタイル レスリンググレコローマン ゴルフ 水球
オリエンテーリング

自転車競技について

写真:颯爽と風を切って走る早瀬憲太郎選手

自転車競技は、戦うフィールドによってまったく違った魅力がある競技です。
トラック競技場で行われるトラック・レース、一般道を走るロード・レース、オフロードを舞台とするマウンテンバイク・レースなどです。
さらにそれぞれがいくつかの種目に分かれています。

トラックレース

  • ポイントレース
  • トラック競技場に設定されたポイントラインを通過した時の順位に従って得点を与えられ、完走後の総得点で順位を決めます。

  • スプリント
  • 写真:トラック競技場を走る早瀬憲太郎選手 トラック競技場を2から3周して着順を競う競技です。距離はおよそ1,000mで、最後の200mで一気にスパートします。

    *サムスンデフリンピックではトラック競技場ではなく公道を封鎖して行われる予定です。

ロードレース

  • 個人ロードレース
  • 写真:まわりの選手に差をつけて独走する早瀬憲太郎選手 一般道を使ったレース。全選手が一斉にスタートして、着順を競う。空気抵抗があるため、単独で逃げるのは、体力を消耗するため、各チームは集団を作り、そのコースを得意とするエースを勝たせるために緻密なレースを見せます。

  • タイムトライアル
  • 各選手が1人ずつスタートし、ゴールまでの所要時間を競う。集団で走るロードレースと違い、個人の実力だけが試される競技種目です。

マウンテンバイク

  • クロスカントリー(XCO)
  • 写真:マウンテンバイクで山道を独走する早瀬久美選手 オフロードでマウンテンバイクを使って行われる種目で、ロードレースと同様に、全選手が一斉にスタートして着順を競うもので、山岳コースが舞台となるので、パワーとテクニックが必要となる競技です。

自転車競技日

日本代表選手が出場する競技日程は以下のとおりです。

7月19日 スプリント(1,000m)
7月21日 タイムトライアル(男子50km/女子35km)
7月23日 ロードレース(男子100km/女子70km)
7月24日 マウンテンXCO
7月25日 ポイントレース(50km)

デフリンピックへの意気込み

早瀬憲太郎選手(ロード)

写真:坂道を力強く進む早瀬憲太郎選手) 自転車競技は全競技の中でも参加国と参加選手数が多いそうです。
ヨーロッパは、サッカーの次に自転車競技が人気で、ろうの選手にとって自転車競技は憧れの競技です。 日本は自転車競技の人口が少なく、人気があるのは陸上、卓球、バレーで、その理由はろう学校の部活動での経験があるからだと思います。
また、学校や親から、「聞こえないから危ない」という理由で自転車に乗せてもらえなかったり自転車での通学を禁止されたりなど自転車に乗る機会が少ないという現状も要因の一つと考えられます。
そこで今回私が、デフリンピックに出場する大きな目標として、自分の結果だけではなく、自転車の魅力、楽しさをろうの子供たちに伝えたいと考えています。
実際は、自転車競技だけが危ないということはなく、結局どのスポーツにおいても自己責任があります。まずは「聞こえないから危ない」という言葉を払しょくし、聞こえないからできないと言うことはない、何でもできる!ということをろうの子供たちや親、学校、世の中に知ってもらうために、自分が自転車競技の選手として結果を出したいと思います。

早瀬久美選手(ロード,マウンテンバイク)

写真:力強く山を越える早瀬久美選手) デフリンピックは今回で2回目の出場です。初めての出場のときは、当初スタッフとして参加する予定でしたが、急遽選手として出ると決めたのが大会の2か月前でした。
今回は、4年間という時間があり、前回と違った気持ちでデフリンピックに向けて練習と経験を積み重ねてきました。ロードもマウンテンバイクもはっきりとした目標を持って臨んでいくそんな気持ちでいます。逆に、プレッシャーも大きいです。3か月前の競技中に、骨折をしてしまい、予定通りの練習ができない状態になっていることに不安と焦りを感じています。
とは言え、どうすることもできないので今できることを最大限発揮し、悔いのないレースをしたいです。それと、女子の選手は人数が少ないので、これからの子供たちに自転車競技に興味を持ってもらえるような一つの「モデル」になれたらいいなと考えています。

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