障がい者の旅行を考える「ユニバーサルツーリズムシンポジウム」【前半】

写真:障害者差別解消法で広がる世界を説明する様子

2月23日、神奈川県横浜市障害者スポーツセンター・ラポールにて、JTB総合研究所主催の「ユニバーサルツーリズムシンポジウム」が開催されました。
平成28年4月から施行される「障害者差別解消法」により、障がい者の旅行がどう変わるのか、誰もが積極的に外に出て楽しむことができるようになるには何が必要なのか、それらについて考えるシンポジウムです。
編集部の車いす社員がシンポジウムに参加しましたので、その模様をご紹介します!

シンポジウムの内容

シンポジウムは3部構成で行われ、それぞれパネルディスカッションを交えて説明されました。
会場では、話をした内容が文字としてスクリーンに表示される「Live Talk」が使用されており、聴覚に障がいのある人にもわかるように工夫されていました。

「障害者差別解消法」施行で旅行がどう変わるのか

写真:第1部での官公庁観光産業課からの講話

第1部では、観光庁観光産業課から、「障害者差別解消法」施行で旅行業における法律の趣旨や向かうべき方向性など、事例を交えながら説明がありました。
障がいのある人は旅行をする際、施設などのバリアフリー状況の把握や施設内の誘導などの対応が必要です。
すべて対応できるわけではないため、どこまでが不当な差別と考えられるのか難しいと感じました。
不当な差別と考えられる事例と、正当な理由があって差別に当たらないと考えられる事例として、紹介されたものは主に下記のとおりです。

旅行業における不当な差別的取扱いに当たると考えられる事例

  • 障がいがあることを理由に、ツアーへの参加をお断りする。
  • ツアー中の補助、介助が必要ないのに介助者の同行をツアー参加の条件とする。
  • ツアー中に必要な措置(車いすの利用、補助犬の同伴、特別食の準備等)の申し出があったのに、宿泊施設・運送機関等での対応の可否などを確認することなく、一律にツアーへの参加をお断りするなど。

正当な理由があり不当な差別的取扱いに当たらないと考えられる事例

  • 合理的配慮の提供等のため必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障がい等の状況をお聞きする。
  • 事前に申し出のあった障がいの状況や必要な条件に、適切に対応できる宿泊施設、運送機関等をやむを得ず手配することができないときツアーへの参加をお断りする。
  • 障がいの状況や必要な措置について、予め申し出がなく、事前に宿泊施設運送機関等における対応の可否等が確認できず、適切な対応が確保できない場合に、参加をお断りするなど。

また、「障害者差別解消法」施行で注目されるのが「合理的配慮の提供」です。

基本的な考え方

  • 障がい者から社会的障壁の除去を求める意思の表明(介助者によるものも含む。)があった場合、過度な負担なく実施できる場合には、合理的な配慮を行うことが求められる。
  • 合理的配慮の内容については、双方の建設的対話による相互理解を通じ、性別、年齢、状態等に応じ、柔軟に対応することが求められる。これは、事業者の本来の業務に付随するものに限られ、事業内容の本質を変更するものまでは含まれない。

とされています。
具体的なイメージで言うと、「車いす利用者のために、段差部分に携帯スロープを設置する」「筆談、読上げ、手話等により意思疎通に配慮する」等です。
注意したいのは、企業は「努力義務」となっていることです。過度な負担の判断は明確に決められていません。総合的・客観的に判断されます。ただし、国土交通省のガイドラインで事業者は、「その理由を説明し、理解を得るように努めなければならない」とされているため、今後、理由がわからず理不尽な思いをすることが少なくなるのではないでしょうか。

ユニバーサルツーリズムの状況

第2部では、ユニバーサルツーリズムについて、欧米と日本の違いなどが説明されました。

ユニバーサルツーリズムとは

写真:ユニバーサルツーリズムを説明する様子

ユニバーサルツーリズムとは、「旅行をする上で何らかのバリアがある方を含め、誰もが気兼ねなく参加できるようつくられた旅行」と観光庁は定義。誰もが安心して旅行を楽しめるよう環境を整備するため地方自治体・NPOなど幅広く関係者の協力を得て、旅行商品の造成、普及のための取り組みを実施し普及・促進を図るとしています。

日本と欧米との違い

日本ではバリアフリーという言い方が一般的ですが、欧米では「アクセシブル(Accessible)」と言い、旅行ではアクセシブルツーリズムと言われています。
考え方として障がいや年齢といった物理的な制限にかかわらず、すべての人が楽しむことができることを保証するための継続的な努力となっていて、現在も改善が続けられています。
高齢化が早期に始まった欧州や障がい者の権利に厳しい米国などでは、日本に先駆けて法制度も整備され誰もが旅行を楽しめる環境を進めています。
現在の日本では、過去どの国も経験していないスピードで高齢化が進んでいることもあり、誰もが旅行を楽しめる環境整備が急がれていますが、環境整備が進んでいる欧米でも移動手段の配慮が中心となっており、旅行の満足度は決して高くはありません。
移動手段だけでなく、観光を含めた総合的な配慮が求められると締めくくられました。

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